絹(シルク)の特性
シルク(絹)は上品で美しい光沢と、蕩けるような肌触りから『繊維の女王』と呼ばれています。
世界三大美女と呼ばれているクレオパトラや楊貴妃もシルクを愛用していたと言われています。
シルクは滑らかな光沢感と艶が特長です。
シルクが妖しく美しい光沢を放つのは繊維の断面が三角形になっていてこの三角断面がプリズム効果で光の屈折・分散を起こさせ乱反射するためです。
シルク(絹)の素となる繭は、“フィブロイン”(全体の70~80%)と“セリシン”(全体の20~30%)という2種類のタンパク質で構成されています。
セリシンが残っている状態では肌触りが硬いため、糸にする時の精錬作業(お湯で煮て表面のセリシンを落とす工程)でセリシンを落とします。
お湯の中に溶けだしたセリシンは捨てることなく化粧品などの材料として使われます。
精錬後に残ったフィブロインにはセリン・アスパラギン酸・グリシン・スレオニン・アラニン・チロシンなど人の肌の成分に非常に近いアミノ酸で構成されています。
次に吸湿性についてですがシルクの吸湿性は綿の約1.5倍もあるといわれ、暑い日は身体から出た汗などを吸収して外へ放出してくれるためサラッと快適に過ごせます。
またシルクは構造上、重なり合った繊維の中に細かな空気の部屋があり、寒い時は温度を保つ効果があるといわれています。
このためシルクは四季を通じて快適な状態を維持する最適な繊維と考えられています。
麻・綿・羊毛などの天然繊維は、いずれも植物や動物の細胞そのものを起源としていますが、絹は、蚕(カイコ)が体内で18種類ものアミノ酸を合成したタンパク質を作り、二次的に繊維の形状にして吐き出したものです。
1つの繭は1本の糸から出来ており、その長さは1000~1500メートルに及ぶという天然繊維で唯一の長繊維です。
その糸の太さは、髪の毛の約10分の1という超極細糸です。
シルクは使っていくうちに摩擦によってフィブリルと呼ばれる微細繊維が毛羽立ちます。
シルクがお肌にやさしいと呼ばれる理由の一つに、このフィブリルがお肌に優しく触れる時に不要な角質や毛穴の汚れを落とし、お肌を整えてくれるからだと考えられています。
シルクの独特の光沢感・柔らかな肌触りは現代の科学をもってしても未だに人工的につくる事が出来ないまさに自然の神秘が生み出した特別な存在で未だに他の天然繊維に類を見ない品質と地位を保ち続けています。
シルク(絹)はヒトの肌の成分と同じタンパク質を豊富に含んでいることから、人間の肌に一番近い繊維といわれ、手術の際に使用する縫い糸、人工血管、医療製品、食品と様々な分野で利用されています。
また肌にストレスを与えにくい素材なのでアレルギーが気になる方やまだ肌が弱い赤ちゃんにも安心してお使いいただける、人にやさしい素材です。
シルク(絹)にはその他にも人に地球にやさしい機能がたくさんあります。
~シルクには天然のUVカット効果があるといわれています~
シルクは紫外線カット効果が(紫外線を吸収して透過しにくい)高いといわれています。
シルク製品を日光に長時間あてると色が変色してしまいますがこれもシルクが紫外線を吸収することから起こる現象です。
~シルクは静電気が起きにくいといわれています~
シルクは調温調質機能に優れており、繊維に程よく水分が含まれているため電気抵抗が小さく、帯電性が低いため静電気が起きにくいのが特徴です。
そのためアレルギーの原因のひとつである埃を寄せ付けにくく抗菌性にも優れているといわれています。
著しく乾燥している日は、シルクでも静電気が起こることがありますが化学繊維製品のような強い静電気は発生しにくく、肌への刺激も少ないことが特徴です。
~シルクは地球にもやさしい素材です~
化学繊維は200℃前後で燃焼するものが多く素材によっては有毒ガスが発生するものもあります。
また燃焼時、肌に繊維が付着し火傷になる場合もあります。
それに対して、シルクは燃焼温度が300~400℃で燃えにくく有毒ガスも発生しません。
また燃焼時に溶融しませんので肌に付着しにくく簡単に剥がすことができる安全度の高い繊維といわれています。
そしてシルク(絹)は石油製品と違い生分解性があり、最終的に土に還すことが出来るサステナブルな素材です。
絹(シルク)の糸について
一言でシルクといえどシルクには、さまざまな種類の糸があります。 繭から引いた糸を撚り合わせ、紡いで出来た糸は生糸(正絹)と呼ばれています。 生糸(正絹)は着物や式服、礼服などのフォーマル着物、柔らか物と言われる白生地の反物から染める着物に使用されます。 ここでは生糸を紡いだ後に残る糸や絹綿を使って作られる糸について少しだけご紹介したいと思います。
【SPUN SILK】スパンシルク(絹紡糸:けんぼうし)
繭を紡いだ後に残る生糸に不向きな糸や、操糸工程(繭から糸を紡ぐ作業)で出てくる繭の毛羽などを原料にして作られた比較的上質な絹綿(真綿)を紡いで作られた糸。
ある程度の長さがある糸で、やわらかな光沢感となめらかな風合いが特徴です。
【SILK NOIL】シルクノイル(絹紡紬糸:けんぼうちゅうし)
スパンシルク(絹紡糸)を作る時に出てくる短繊維や落ちわたを再利用して作られた糸です。
光沢はありませんが素朴な風合いが特徴です。
節(ノイル)を含む短繊維は空気の含有量も大きく、絹が本来もつ機能、保温性・吸放湿性に富んでいます。
【SILK】シルク(不織布)
柔らかくした繭を糊などを使わず、コームで薄く引き伸ばした不織布はお肌に優しく、人間の肌にとても近い繭の成分(セリシン)がそのまま残っているのでスキンケアに最適な素材です。
【WILD SILK】ワイルドシルク(野蚕)
家蚕とは違い、厳しい自然の中で育った野蚕は軽くて多孔質構造な繭を作ります。
軽くてふんわりとした風合いが特徴で、ウールにも負けないぐらいのぬくもり素材として愛用されています。
【ECO SILK】エコシルク(くず繭)
捨ててしまうような短い絹糸を再利用したくず繭糸は、保温性に優れておりTシャツなどのカットソー編み地にすることで、ぬるま湯・手洗いで洗濯ができます。
他の絹製品に比べて格段にカジュアルで日常使いのできる優れたリ・ユース素材です。